わたしはトルコに行っていたのか?

17日に帰ってきたのだが、数日だらだらと眠ったり本を読んだりして過ごした。読んだ本は:
『事件の痕跡』 日本推理作家協会編、光文社
探偵ガリレオ』 東野圭吾文藝春秋
『蜜蜂のデザート』 拓未司、宝島社
『死人にグチなし』 黒崎緑東京創元社
『いのちのパレード』 恩田陸文藝春秋
あれ、もう一冊読んだような気が……しかもなかなか面白かったのに……返したらしい。返したとたんにこうもすっぱり忘れてしまうというのはいかがなものか。蜜蜂は日常の謎、舞台はフレンチレストランである。なかなか面白かった。おっ、思い出したぞ。『ユングフラウ』 芦原すなお東京創元社 

さてトルコ、飛んでイスタンブール、トプカピ宮殿、カッパドキアなどというところには一切行かなかった。夫からは「トプカピ饅頭」をリクエストされていたのだが、そんなわけで買ってこれなかった。地中海のビーチリゾートではあり、素敵な場所ではあったのだが、朝から晩まで(9時半から9時半まで)会議で、プールやビーチで戯れる人々を横目に広大な敷地内を歩いて、昼食会場、会議場、ホテルを往復していた。ここはマレーシアのビーチリゾートと言われても信じていただろう。会議の使用言語は英仏西で同通つき。自分の母語で会議できる人は有利だなあと思った。通訳は非常に質が高く、国際会議の一線級の通訳者たちがボランティアでやってくれたのだ。

帰ってきたら選挙でにぎやかになっている。政権交代はもう既定のことという論調だが、民主が大勝するのだけはやめてほしい。社民党あるいは共産党が伸びないと、憲法が改定されてしまう。わたしとしては、改定したい部分もあるのだが、民主と自民の思うように改定されてはたまらない。メディアがきちんとした仕事をしていない。政党のマニフェストも政策の根幹と末端が入り乱れていてできのいいものではないが、新聞は各党の主張を整理して各項目の次元を合わせ、よくわかるようにしたうえで、それが実現した社会がどんなものかを想像力を駆使して示すくらいのことをしてもいいのではないか。自民党は安全と言っているが、その安全というのは、現在向かっているような軍事国家への道、警察国家への道で、表現の自由が制限されるような社会ではないのか。民主党は比例議席をなくすと言っているが、それは少数意見が切り捨てられることを意味するだろう。

裁判官の国民審査にしても、テレビで特集でもやって裁判を振り返るくらいのことをやってもいいんじゃないか。裁判員制度なんかやるよりもっと司法が身近になるんじゃないかと思うんだけれど。

旅行に持っていく本

 7日から旅行(出張)だ。会議の連続だとは言え、本を読む時間くらいあるだろう(ないと困る)。そこで、もって行く本を選ぶわけだが、どんな条件があるだろう。まず、重いのはだめ――理由はいうまでもない。(中身が)軽すぎるのもだめ――すぐ読み終わっちゃうから。成田に着くまでに終わりましたではしょうがない。面白いと保証つきでなくては――別のを読むわけにはいかない。しかも10日だ。10冊は持てない。結局、フランス語のミステリかなんか、おお、ベナキスタのマラヴィータ(めっちゃ面白かった)の続きを買ってまだ読んでないから、それと、デヴィッド・ロッジの(英語の本)本かな。幸いにも、外国の本は物理的に軽いし、日本語の本より時間がかかる。あと、日本語が恋しくなったときのためにダルジールものを一冊。ということにしよう。フランスに行くときだと本は現地調達できるからあまり悩まないけど、今回はトルコ、しかもリゾート地、しかも日中は会議ということで、現地調達は不可能そうなので、悩んでしまったというわけだ。

『小春日和』 金井美恵子中央公論社
『彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄』 金井美恵子朝日文庫
『名もなき旅』 東直己、ハルキ文庫
『クリスマスに少女は還る』 キャロル・オコンネル、務台夏子訳、創元推理文庫
東直己以外は豊崎社長お勧めの本だ。で、さっき読み始めたのが『時の渚』笹本稜平(文藝春秋
 

死刑と核抑止力、死刑廃止と憲法九条の関係

法務省は(あえて「法務省」と言う)、三人の死刑を執行した。
現在国会は解散している。大臣は形式的に存在するだけだ。おそらく選挙前で忙しい森法相は片手間に判子をついたんだろう。

報道によると、法務省幹部は「これ以上、期間が開いてしまうと、裁判員制度を担う市民たちに死刑制度の必要性を理解してもらえなくなる」と言ったそうだ。この制度を考え直せとさんざん言われているのに(自由権規約委員会勧告、人権理事会での勧告その他)制度の維持のために人の命を奪う。ましてや、冤罪事件の発覚で、疑念が生じている時に、その疑念を打ち消そうという意図がある。人の命を制度維持の手段としか考えなくなる精神の荒廃をなんとしたものだろう。

アムネスティ日本の死刑執行抗議声明はこちらhttp://homepage2.nifty.com/shihai/090728seimei.html

ちょっと出かけなくちゃならなくて、九条の話まで行かなかった。勢いが殺がれてしまったのだが、ここから続き。
要するに、世界は暴力による問題解決をやめようとしているということなのだ。暴力による問題解決は一見簡単で効果的なように見える。でも、それは誰にとって効果的なのかということだよね。武力があるからと偽りの安心を得るより、軍事費に使う金を福祉に回す、あるいは、公正な国際秩序を作る努力に振り向ける。サックスさんの本のように、貧困な国や人を少なくするほうが、たくさんの人が幸せになれる。死刑も同じ。死刑があるからといって、どれだけ安全になるのか。犯罪を少なくするには、もっと地道な社会的努力が必要なのに、死刑は、「犯罪には厳正に対処している」と一種のアリバイのように使われている。死刑なしでもやっている国は、世界に138カ国もあるのだ。

さて、読んだ本は明日書きます。もう寝る時間だ。

『地球全体を幸福にする経済学』

リクエストが到着したので図書館に行ってきた。相変わらず自動貸出機は苦手だ。指をじっと当てたり、息を吹きかけたりしても、「開始」ボタンが押せない。今日はついに隣にいる人に押してもらった。簡単に「ポーン」と開始する。やっぱり機械が悪いわけじゃないんだわ。

表題の本は、ジェフリー・サックス著、野中邦子訳、早川書房
そうなんだよなあ、こうすればみんなが幸せになれる。ただし、アムネスティとしては、その時に人権の視点を忘れないでね、と念を押しておきたい。こうして処方箋はあるのだが、世界的な経済危機によって、ここにきてドナー国の拠出金が減っているという。日本は選挙だけど、この本が社会福祉外交政策についてどのように語っているかを参考にしてもいいかもしれない。「国務省が一日に消費する金で、アフリカのすべての寝室に五年分の抗マラリアの蚊帳を提供するのに十分な費用がまかなえる」のだそうだ。これはアメリカの例だが、国民が飢えて破れかぶれになる国をそのままにして軍事費をかけても、安全保障には役立たないのだ。

環境ホルモンは消えたのか? メディア・バイアス

まだ梅雨は明けてなかったのか?と思うような空が続く。
『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』 松永和紀光文社新書
 世に溢れるエセ科学を糾弾し、でっち上げは論外だが、不勉強のせいで怪しい情報を流通させていることや、センセーショナルな話題だけを取り上げ、後に危険性が否定されてもそれは報じないから、間違った情報を定着させているなど、メディアの責任を追及している。
 とくに多い間違いは量に関するもので、○○はいい、悪いと言うとき、実際は体重と同じだけの量を食べなければ(タマネギは糖尿病にいい)ならなかったりする。また、リスクとベネフィットを考量しない議論がなされている。『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』(うん、読んだぞ、読んでぞっとしたぞ。ところが、「一日の許容量」について大きな間違いが書かれているという。)をきっかけに始まったメディアの添加物バッシングは、その典型だという。添加物も農薬も、そのリスクを排除して代わりに使用する物の安全性、環境負荷を冷静に考量すると、一方的に添加物・農薬は危険と言い切れないのだそうだ。( )内に書いた大きな間違いとは、
 「ネズミに、Aという添加物を100グラム使ったら死んでしまった。じゃあ、人間に使う場合は100分の1として、1グラムまでにしておこう」 大雑把にいえば、そのように決めているのです。 
 というくだりで、基準にしているのは、「毎日与えても害にならない量」であって、「死んでしまう量」ではないということだ。コンビニのお弁当に保存料を使わなければ廃棄量が増えて環境負荷が高まると著者は主張している。環境ホルモンの人に与える作用については確認できないということで騒ぎは沈静化したが、そのなかで「微量でも作用を及ぼす」という仮説が危険性をあおったが、この仮説は完全否定されたのに報道されないものだから誤解が定着しているという。

 メディアがセンセーショナルな話題だけを集中的に取り上げ、不勉強だという点についてはまったく同感。たとえば、現代社会の問題を語るときに「殺人事件が増え」というのは枕詞のようになっているが、実は減ってるんだというと、「自分の主張のために嘘までつくのか」と罵られる始末だ。
 ただ、著者の立場にも「科学者としてのバイアス」があることは否定できない。つまり、現在の社会のあり方と、それに貢献してきた科学を信じるという立場である(害が確認されなければ問題なしとすることなど)。だが、リスク・ベネフィットあるいはリスクのトレードオフに関しては、リスクだけ、あるいは片方のリスクだけしか知らずに騒ぐのではなく、両方を知った上で判断してほしいと著者は思っているのだろうし、その情報を正しく伝えてほしいとメディアに要求していることには賛成だ。

なんか、長く書いちゃったぞ。
『駐在刑事』 笹本稜平、講談社
おもしろかったから、他の作品も読んでみよう。
『天才たちの値段』 門井慶喜文藝春秋
『魔術師 イリュージョニスト』 ジェフリー・ディーヴァー池田真紀子訳、文藝春秋
ディーヴァーは面白いのだ。
『どれだけ読めば気がすむの?』 豊崎由美アスペクト
 あ、この本読みたい! これも、これも、ときりがなくなる。前編の『そんなに読んで、どうするの?』といっしょに買って、これを頼りにひとつひとつつぶしていきたい。よし、買うぞ。

カムイ伝

図書館の本:
『バランスが肝心』 ローレンス・ブロック田口俊樹他訳、ハヤカワ文庫
『もえない』 森博嗣角川書店
『秋の花火』 篠田節子文藝春秋
『平台がおまちかね』 大崎梢東京創元社
『しらみつぶしの時計』 法月綸太郎祥伝社
『胡蝶の鏡』 篠田真由美講談社
T-REX失踪』 鳥飼否宇講談社
『幽霊温泉』 赤川次郎文藝春秋
『ジバク』 山田宗樹幻冬舎
『別冊 図書館戦争?』 有川浩アスキー・メディアワークス
これで図書館戦争はぜんぶ終わり。
大崎梢は本屋さんが舞台で、サイン会はいかがなどの成風堂シリーズの彼女が話の中に出てくる。

motokoさんが貸してくれた『カムイ伝』現在10巻、田中優子さんの『カムイ伝講義』も同時進行中。ビッグコミック連載中に少し読んでたけど、通して読むのは初めてだ。

町でうわさの天狗の子岩本ナオ、『ちはやふる末次由紀

今仕事はミステリなので、報告書続きのあととあって先に進むのが楽しみだ。

児童ポルノ禁止法改正案

週刊金曜日で読んだんだけれど、国会で児童買春・児童ポルノ禁止法改正案が審議中だそうだ。「単純所持」を規制するかどうかが争点になっているという。たとえパソコンにポルノがあったとしても、誰がいつそこに置いたのかを確実に証明できる捜査手法が確立していない限り、でっちあげ、冤罪が増えるのは確実だ。しかも、所持していると疑われるという名目で、恣意的に逮捕・家宅捜索ができてしまう。確実な証拠がない限り令状は出さないだろうなんて期待はまったくできない。

ようやく新しい本に取り掛かった。9月半ばまでには終わらせたい(希望)。